というわけで見てきた
前評判自体は良さそう、というよりなんか「とりあえず見てこい」という雰囲気だった
まあテレビ放送の3話分ぐらいの時間なので、ここでフックがなかったらそれはそれで終わってるので、どうやらそうではないらしい
以下物語の解読とか感想とか。 当然ネタバレは含んでいる のでその点はご了承を
個人的な感覚として「オタクが語りたがる作品は佳作」だと思っている。これは今まで生きてきたうえでの感覚で、要は勘である
上記の「とりあえず見てこい」の雰囲気はとにかく語りたいという気持ちが全面に出ている節があった
ここでいう佳作というのは「佳い(良い)」作品なので、悪くはないし面白いものでもある。ただ傑作には届かない。そういう意味合いでの佳作
具体的な作品でいうと「新劇場版はQが最高。シン・エヴァは置きに行きやがった」とか思ってる人間である。そんな人間の感想とかである
結論から言うと、その疑念のまだ答えは出ない。作品が完結してないので当然だが
ただ、映像的には面白かったのは確かだった。公式ネタバレを含み、ある程度の流れは予想できていたが、とりあえず序盤の数分で「おいおいおいおい」となった。独特の緊張感がある
はっきり言って従来のファン向けのサービスで、作品的にはテーマのブレが目立つマイナスポイントというのが第一印象
宇宙世紀の架空戦記をやりたいための準備部分かつファンサービスなら妥当といえば妥当なのかもしれないがそれ以外の妥当性がない
映像としても富野の後追いにすらなってない(まあそれを後追い出来てるのはガンダム以外でもかなり少ないが
新しいことをしているという声もあるが、パラレル宇宙世紀というワードがすでに公式で使われている通りで、そこまで新しいものでもない
逆襲のシャアのような謎のニュータイプ力で小惑星を逸らすところで区切っているのはけじめのようなものなのかもしれないが
UC0086のサイド6に舞台が移ってからは雰囲気がガラッと変わる。変わり過ぎなぐらい変わる
クリーンな印象が目立つSF的な背景から埃っぽい日本の背景に、無駄に細部が充実した二次創作然なキャラクター描写がおぼろげな輪郭から表出していく一次創作然なキャラクター描写に移り変わる(文字通り前半は二次創作で後半が一次創作なのだから当然なのだが
どこまで意図した過程か、あるいはやってみた結果かわからないが、士官をはじめとしたエリートの描写がコロニーを始めとした一般人の描写に移りかわる
たぶんテレビ放送時は後半からやるのではないかと思う。思うけどこれ作品のやり方として良かったの!?という感じが強い。地続きで出てきたのはモビルスーツほかメカ周りのデザインだけでそれ以外はとても同じだとは思えない
作中のサイド6はかなり日本ナイズされており、というかほぼ日本そのものという感じで、スマホの文字設定も駅の案内表示もどこかで見たことがありそうなぐらいにゴリゴリの日本語でゴシック体。ビルの上のスペースに神社が小さく構えられてるのとかマジで東京の一角のよう(下記リンク参考。ただ作中はもっと簡易的だったので軍艦島にあった神社がモチーフかもしれない
ストリート文化などがあしらわれているのは2000年頃の範囲っぽいが、あそこまで様々な点で治安の悪い情勢は現実の日本とはズレている印象がある
この世界設定(舞台設定)に意図を見出すなら登場人物の抱えている鬱屈さや生きづらさを日本の若者のもつそれらに重ねるためだろうか。そう考えると仮想戦記から架空の宇宙世紀を描いたことは、仮想戦記から架空の歴史を歩んだ日本の姿という解釈もできる。何かしらの戦争が起こり、サイド6よろしく中立だった日本は直接的な敗戦の被害を受けているわけではないものの、難民や戦勝国の横暴さの問題を抱えているというところだろうか
仮定に仮定を重ねているのでこのあたりは本放送待ちのほうがいいだろう。ここで打ち切る
人物の話に移るが、マチュに関してはまさに若者という感じで、無鉄砲さや自由のなさへの嘆き、横暴さに怒りを抱く様子など、真っ当に若者の姿を描こうとしている印象があった
そして同時に彼女自身はそれなりにハイソサエティの住人のようで、接点のない難民の環境をほとんど意識していないあたりもそういった若者感がある。事実、眼の前でおきた警察MSの横暴さに怒りを抱いているが、ニュースを意識していないようだった。自分が関わって初めて見た(と思われる)ニュースには動画もあり「またも」的な表現があった(つまり似たようなニュースは過去に何度も流れているはずであった)にも関わらず、横暴な警察MSを見たときには初めて見たような感想を漏らしていたのはその証拠だ
すぐそこにあるはずの世界が見えていないのは学校等に縛られた若者の描写といえる
一方で彼女の嘆く自由のなさは、コロニーという環境・空間がそうさせている様子も見て取れた。これは宇宙を舞台とした題材としては当然であるが、彼女がどういう答えを見出すのかはまだわからない。序盤だし
そのマチュが出会って自分の知らない世界に惹かれるきっかけとしてニャアンとシュウジが出てくる。ガール・ミーツ・ガールでありガール・ミーツ・ボーイでもある
ニャアンが知らない世界のきっかけとして、シュウジが夢見る世界を知る人物としてというのが役割的なところか
ニャアンはほぼ一貫して弱い立場が強調して描かれており、内気な印象のシーンが多い。同じ無茶をやるとしても、マチュは無鉄砲さからやるがニャアンは必要性にかられてやるタイプの差がある。結果的にマチュのほうが上手(うわて)になる
そのくせニャアンはマチュもシュウジもあんまり頼りになる感じを抱いていないのがまた可愛いところでもあるのだが。愛媛みかん?
逆にシュウジは細かい部分がわからず、なんなら荒い部分もあんまりわからず、目的も手段もそもそも何が見えているのかも謎。ただ彼の描くグラフィティ(とそのモチーフの世界)がマチュを惹きつける
彼に関してはまだ触れるところが少ない。物語のフック役であり、マチュの先にいる人物である
出自も立場もわからないが、同時に出自がわからない……出自自体はわかっててどうして持ってるのかわからないガンダムも謎。ガンダムが言っているというワードも謎
繰り返すがまさにフック役。昔はこういう不思議系キャラってヒロインがやってる感じだけどそのあたりは今っぽい
ガンダムはいつだって鬱屈した青少年少女の味方なのだというその前提は崩してない
子どもが成長する過程に、邪魔をする存在である大人たちや、否定する世界に対して抵抗する力こそがガンダムの(物語的な)真骨頂なわけで
ただここからどうするつもりなのかはわからない。当然だがまだ序盤
宇宙世紀を題材にした外伝は基本2パターンあって、「ニュータイプ」の設定を使いたいパターンと、「ニュータイプ以外」の設定が使いたいパターン
GQuuuuuuXは前者のようだが、はたしてニュータイプという設定の回答を出せるのだろうか
これでUCやNT未満の回答だったりすれば、はっきり言って駄作も駄作である
シリーズの中では異質なメカデザインとポップなキャラデザインがゲーセンで暴れるだけに終わってしまうなど当然だがもったいなさすぎる
それがBeginningを見ての感想と願いである